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88歳の花火

雨が上がりのアスファルトの香り、空に浮かぶ雲の形、照りつけるサンシャインライト…
いよいよ2009夏がやってくる。
皆さんご機嫌いかがでしょうか?
もうビーチサンダルは買ったでしょうか?
サーファーの友達は22日に見られる46年ぶりの皆既日食を見ようと屋久島に旅立っていきました。
ベリー羨ましい。
私はというと執筆に集中できる環境をと東京を離れ父方のおばあちゃんとおじいちゃん、そして両親がいる石川県能登町に行ってきたので今回はその出来事を書いてみようと思う。
5泊6日を計画。3枚のTシャツとパンツ、あとPCだけを持って羽田を飛んだ。
小さいときから、お盆と正月両親に連れられてきていたこの場所。
今でも全く変わっていなく、強いて言えば近くの街まで続く県道にショートカットのトンネルができたくらいの変化だ。それでもコンビにまで車で30分走らないとない。
子供の頃は生まれ育った神戸の街を離れこの田舎に連れてこられることがイヤでイヤで仕方なかった。30歳を超えた今ではなぜだか心地よく感じてしまう。
これも年を重ねてきたせいなのか、嬉しいやら悲しいやら…
82歳になるおばは88歳になるおじの看病をしていた。
おじは5年前、夜中用を足しにいったトイレの先にある階段を踏み外し地面に落ちた。
頭からダイブしたらしい。
強打したのにかかわらずその夜は赤チンを塗って眠ったらしい。
次の日の朝、意識はなかったおじを見ておばは慌てて救急車を呼び、結果なんとか一命を取り留めた。そもそもなんで赤チンだったのかがファニーミステリーなのだが今では復活しなんとか自分で歩ける状態にまで回復している。
そんなおじは今回の滞在期間に88歳のバースデーを迎えた。
おばは町役場からおめでとうと2万円のお祝い金が出ると嬉しそうにしている。
私はおじの誕生日を祝おうとバースデープレゼントに花火を買った。
夜、8時。
ようやく暗くなった庭に出ておばと一緒に花火をして祝った。
おじは見てくれているのだろうか?
暗くしたおじの部屋へ向けて打ち上げ花火を連発する。
おばは鮮やかに光を放つ手持ち花火を恐る恐る動かしながら88の文字を書いた。
何度もおじーちゃーんおじーちゃーんと叫びながら…

夫婦は死ぬまで夫婦であってほしい
離婚が常識化する21世紀の真っ只中で花火で88の文字を描くおばあちゃんの愛は誰よりも清く美しく見えた。
どうかいつまでも仲良く、そして幸せに…
そんなワンシーンに浸りながら肝心な執筆作業は思うように進まないでいた。
何度も何度も書き直しているうちに思考のラビリンスにはまりあっという間に5日が過ぎていった。
改めて自分の実力のなさと思い知らされた旅だった。
このままだと本当に出版できるのだろうか…
毎日が暗中模索、阿鼻叫喚、勇往邁進のポールです。

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