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ステージを終えて…

夜9時過ぎ。
ステージを終えて着替えをし、公民館の玄関から車へ荷物を運ぼうとしていると、中学生くらいの女の子たちからサインをお願いされた。ありがたいなと思って一人一人名前を聞いて書いていると、私も僕もという流れができて、気づくとちょっとした列ができていた。そんな時だった。
「登天ポールさん!」
玄関から50歳くらいの女性が先日出版した本を手に近寄ってきた。
祭り客だろうか、いや、それにしても今到着したような息遣いをしている。
宛名は○○子でお願いしますというので書いて渡すと、さらに震えるような声で言った。
「一言書いてもらえないでしょうか…」
その時僕はハッとした。
 
 苦しんでいる娘さんがいる…
 
僕はがんばれマウンテン!と書き、その下に星が飛び出したしあわせマウンテンの絵を描いて渡すと、ありがとうございますと言って泣いた。
子供たちの輪を切り裂き、泣きながら去っていく彼女の後姿を僕はただ呆然と見送った。
帰りの車の中で、あの後姿が何度も脳裏をよぎる。
本を買ってくれて、持って来てくれて、こんな嬉しいことはないというのに、一言かけてあげれなかった悔しさばかりが残った。
 なぜあの時、言葉が出てこなかったのだろうか…
今なら分かる気がする。
そこには言葉にならない「命」があったからなんだと。

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