ボングポングパラシュート
朝10時。
久々行ったジムの帰りに寄ったスーパーマーケット、サミット。
東京ではリーズナブルなお店として大人気のこのスーパーに沢山の買い物客が並んでいる。
開店の時間と重なったせいか沢山のおじいちゃんやおばあちゃん、主婦たちがちょうど入っていく時だった。
「午後1時までポイント5倍」
どこの棚にも派手にポスターが張り巡らされてある。
ポイントカードがどうも馴染めない私はちらっと見て過ぎ去るが、朝から並んでいた人々はここぞとばかりに食料品を入れている。
私も久々の買出しとあってフルーツや野菜、ハムやソーセージ、生活用品を買い物籠に入れていく。あれもこれもと選んでいるうちにいつの間にか買い物籠はいっぱいになる。
先ほどのポスターが目に入った。
「午後1時までポイント5倍」
…今日の買い物の量だと一気にポイント貯まるんじゃないのか…
絶対に入るかと思っていた私が心がどんどん揺らいでくる。
「どこどこパンパンパンパンパン、どこどこパンパンパンパンパン」
後ろからすごい勢いで変なセリフが聞こえてきた。
振り返ると30代の二人の眼鏡をかけた男性が店員に話し掛けていた。
「パンはこの棚の向こう側です」
店員は驚いた表情だったが丁寧に対応する。
おそらく中国人であろう。どんだけパンが好きやんと思いつつその場を後にする。
レジに差し掛かったとき、またまたポスターが目に入る。
レジの会計を済ます買い物客は嬉しそうにポイントカードを差し出してる。
私は負けた。
サービスカウンターはどこだい?
「ここに記入をお願いします」
住所、年齢、電話番号、そして簡単なアンケートがある。
お決まりのQに少々雑な文字で走り書きをしながらどれくらい貯まったら使えるんですかと質問をする。
「詳しいことはこのパンフレットに書いてありまので」
出たぁ~~!そんなことも知らないの的スマイル。
あまりにも無愛想だったのでくそ~ともう一度質問する。
「キャッシュバックってあるけど現金に変わるの?」
「ええ、そのパンフレットをお読み下さい」
また出た~~~~!!!250メートル級の投げやり。
ダメだなこの人。
僕はニューカードを手にとってそそくさにレジに並んだ。
ピッピッピッ!
金額を表示するディスプレイの数字がどんどん上がっていく。
半分焦る気持ちと半分ポイントが貯まる高揚感が交差する。
「合計4742円です。買い物袋はお持ちですか?」
最後に10円プラスされて財布を見た。
…千円札が3枚…
慌てて小銭をチェックする。
100玉が3枚と…到底残りの金額に達しそうもない。
ましてやオーバーした1742円分の商品を、そんな大量な商品を減らせそうもない。
この修羅場をどうする…
店員の目が、後ろの客が、一瞬スローモーションのように視界に入った。
目の前にVIZAのマーク…OH!ジーザス♪助かった…
「じゃあカードで」
使わないと決めていたクレジットカードをはじめから差し出すつもりだったかように差し出す。
そしていよいよ今日のその時がやってくる。
東京に上京して12年。
なんどかサミットにはお世話になった。
しかしどんなときも無視し続けた12年間。
私はあたかも12年間持っていたようにポイントカードを差し出した。
見せてくれ、ポイント5倍の恐ろしさを!!!!
「カードでお支払いですね。じゃあポイントは付かないので閉まって下さい」
ガガーーーーーーン!!
バクデンガイデ~~~~~~~~~~ン!!!
ボングポングパラシューーーーーーーーーーーーーーーーーート!!!
私は今後の人生においてあらゆるポイントカードを一切作らないと神様に誓った。
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