リバーサイド
家の前に走っている細い国道を越えたところに、お世辞でもキレイとはいえない、たまに洗濯した泡などが流れてくる普通の庶民的リバーがある。
そのリバーサイドに、ホテルのプールサイドにあるような寝転べるリゾート風イスを持っていって座った。
セラセラセラ~
川のせせらぎサウンドがほのかに揺れる木々のソフトサウンドとともに聞こえて、絶妙な癒しBGMと変わる。
セラセラセラ~
昼の1時頃とあって顔面にもろ太陽が降り注ぎ、暑いというより痛い。二年前ユニクロで買ったサングラスを得意げに掛けると、気分は一気にリゾートモードになった。
セラセラセラ~
夏の雲ってモコモコしてるよな~
青いキャンパスに練乳をこぼしたような雲は僕をさらにノスタルジックな旅へと誘う。
天空の城ラピュタってあるんやろうか…
地球は回る~♪ ぼくらを~乗せ~♪
急にトキみたいな白い大きな鳥が真上を飛んでいった。
トキ?
いやいや、こんなところにいる訳ないだろう。あれはアミバやろ~
頭の中はいっきに漫画「北斗の拳」ワールドになっていった。
ジュワ~ ジュワ~
太ももから汗が出てきた。よく見ると首、胸からも汗が流れて、へそに溜まっている。
その自分の姿を見て、熱いよりも先に自分がハンツ一丁だったことに驚いた。
ウワ~ ワイルド&リバティ~
能登に来て4ヶ月。確かに僕は麻痺していた。
近所の集落のおばあちゃん以外は誰もいないし、たまに国道を通る車も、ほとんど地元の奥能登の人間しか通らない。だから僕は家にいたスタイルのままイスを取って、そのまんま来たんだ。しかし暑いな今年は…
セラセラセラ~
ミンミンミン~
セミも油セミばかりで、ツクツクボーシのセミ君はいないのかな~
セラセラセラ~
ダメだ、やっぱり熱い。思わず立ち上がり、条件反射でリバーを見た。
汚すぎる~
でも飛び込もうとしている自分がいた。
せめて足だけならと恐る恐る本当のリバーサイドへ行った。
ゴツゴツした石や岩…その影から!!!!!
BIG魚!!!!!現る!!!
そういえば先週、おばあちゃんが夕食で食べた魚の骨をこのリバーに投げ捨てた時、モンスター鯉みたいやつが現れて小魚たちをなぎ倒しながら、一気に食っていたことを思い出した。危なかった。僕はこの夏一番の危機を回避したのかもしれない。
イスに戻った。
なんだか、もうイスに寝転ぶ気になれない。
その理由はすぐに分かった。
水に入られないのに、プールサイドみたいなイスに寝てるという、ただ熱いだけという事実を知ってしまったからだ。あんなにリゾート気分だったのに、急にしらけた。
セラセラセラ~
ようやく風が出てきた。
僕はリバーを見つめながら、まだリバーに入るか迷っている。
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