南アフリカを訪れて〜日本人としてのアイデンティティ〜
「Where are you from?」
日本だというと、寿司だ、トヨタだ、津波だ、知っている日本のことを積極的に話してくる。
どうやら南アフリカでは日本人は珍しいらしい。
街中では寿司の看板があったり、日本車が走っていたりするのだが、確かに日本人は僕も2週間を経てまだ一人しか出会っていない。
3箇所目の宿で出会った2人組のアメリカ人男性との会話だった。
彼らはHIV感染を防止するためNGOの仕事でボツワナに27か月滞在し、今、年末の休みでケープタウンに来ていた。
お互い年も近いこともあり、僕らはすぐに打ち解けた。
何の話でそうなったのかわからないが、仕切りにアイムソーリーと言ってくる。
ようやく第二次世界大戦のことだと理解できたのは、ヒロシマ、ナガサキというキーワードが出た時だった。
あの時は悪かった、許してくれと。
僕はどう答えていいのかわからなかった。
誤った対応をしたら、それが日本の民意だと受け止められかねない。
いきなり日本人としてのアイデンティティを問われたような気がして、言葉を探した。
あの敗戦で日本は反省し、平和国家へと進み、他国を攻撃するベクトルを、自国の発展へと向きを変え、経済大国になることができたと素直に思ったことを伝えた。
すると、彼は「I respect for you!I respect for Japanese!」と深々頭を下げて見せた。
思わずサンキューと、何だか僕で良かったのかと複雑な気持ちになった。
彼は日本語でリスペクトはなんと言うのかと僕に尋ねた。
「尊敬します」っていうと「SONKEI SIMASU! SONKEI SIMASU!」ってよほど響きが気に入ったのか何度も何度も言った。
彼のお笑い芸人のコントのようなイントネーションに思わず笑ってしまう。
とても和やかなムードになり、僕たちは時代を超え、プチ日米和親条約という名の握手を交わした。
もしかして僕が思っている以上に、日本人は素晴らしい人種なのかもしれない・・
日本人をほとんど見ないこの街で、僕は急に胸を張って歩き出したくなった。