南アフリカを訪れて~ランガ・タウンシップツアー~
ケープタウンのはずれ、20キロはずれた場所にランガ・タウンシップと呼ばれる旧黒人居住区がある。
旧アパルトヘイト時代に白人と黒人と区別され、黒人専用に移住させられた場所だ。
今回はケープタウンからのツアーに参加した。
ワンボックスカーに僕と70歳くらいの歴史学者風なアメリカ人男性と二人だった。
トタン屋根の街並みが見えてきた。ランガ黒人移住区。
黒人の子供たちが道端で遊んでいる。
明らかに黒人しかいない。
完全な黒人ローカルの雰囲気に少し体が緊張している。
ガイドのロイはここのタウンシップ出身だということが唯一の安心材料だ。
矢つぎ早に彼はアパルトヘイト時代の歴史を話し始めた。
白人以外の人間を6種類に分けた。
日本でいう士農工商、身分制度の時代と似ているだろうか。
しかし、最も違ったのは、政府主導ではっきりと居住区を限定して分け、パスカードを持たせた。
そのパスカードを発行したり、通行所が設けられていて、その跡地を始めに見せてもらった。
中には当時、パス制度に反対した黒人デモの写真やパスを燃やしている写真もある。まさに今立っているこのランガの場所で壮絶な白人と黒人の摩擦があった。
中学校の時、世界史の教科書に載っていた。あの場所に今立っていると思うと、非常に感慨深くなる。
車輪がない車の廃車、赤く錆びて、その鉄の塊がゴツゴツ、と音を立て、間違った場所に入ってきた感じがする。
さらに街中へ進むんでいくと、居酒屋なのかバー、駄菓子屋のような。子供たちがジロジロ見ている。
一体何をして生活しているのか、聞きたいが彼の英語が全く早くて何を言っているのかわからない。さらに奥へと進むと、一軒のトタン屋根の家に案内された。
狭い部屋の中に夫婦2人が慣れたように挨拶をする。
ここはいつも協力してくれているのだろうかとそんなことを思っていると、急に鼻をつん裂くような悪臭が襲った。
一瞬食材が腐った匂いなのかと思ったが、布団や衣類の匂いだった。洗濯は手洗いだという。何重にも重なり、ものすごい匂いを放っている。
古い家具、古い冷蔵庫、いつの時代のものだろうか、この部屋で家族7人が住んでいる。
「ここにはいじめや差別はあるのですか?」
と聴くとガイドは、
「タウンシップではみんな同じ立場の人たちが集まっているからみんなで助け合って生きている。互いのコミュニケーションも厚く、情報もみんなで共有し、ここには都会にはない大切な絆がある」と誇らしげに語った。
タウンシップツアーに参加するまでは、差別された黒人たちが貧しく、仕方なく住んでいる人たちのイメージがあったが、彼らなりの心の豊かさがあった。
タウンシップで遊ぶ子どもたちの笑顔は限りなく美しかった。